佐伯瑛

事故チュー
「佐伯くん!
「…………。
「ちょっと、待って!歩くの早いよ!
「俺はこれがちょうどいいんだ。早く帰って店開けんだから。
「でもさ、これじゃ一緒に帰るとは言わないよ?
「おまえが早く歩けばいいだろ?
「言うと思った……ねえ、佐伯くんてば!
「あぁ、うるさい!わかったから──あれ?
「ワッ!
チュッ
「!!
(キス……しちゃった……。)
「おまえ、今……。
「う、うん、ゴメン。だって、佐伯くん、急に止まるんだもん……。
「あぁ……まあ、そうだけど……。
「?
「なぁ、おまえ……初めて、だよな。こういうの?
「そ、そんなこと聞かれても……。佐伯くんこそ、どうなの?
「俺、なんか前にも──
「したことあるの……?
「ハア?初めてに決まってるだろ!いや、違っ……なんの話だよ!?
「えっ!?だって、今、唇が──
「事故だろ!?事故だよ、これは!
「……。
「……誰にも言わないように。
「う、うん……。
「俺、店あるから、じゃあ!
(逃げた……。でも、佐伯くんとキスしちゃったんだ……。)

志波勝己

事故チュー(出会い前)
事故チュー(出会い後)
(ふぅ……ハードル運ぶのも楽じゃないなぁ)
「○○。
「えっ?あっ、志波くん。どうしたの?
「それ。どこに持って行くんだ?
「あそこの、体育用具室だよ。
「手伝う。ひとつ、よこせ。
「悪いからいいよ。もうこれで終わりだし。
「……その調子で運んでたら日が暮れるぞ。
「うっ……で、でも……。
「遠慮することないだろ。いいからよこせ。
「そっ、そんなに強く引っ張らないで……あ!
「…………っ!
チュッ
(……なんかいま、唇に柔らかいものが……)
「さっさと離さないからだ。
「う……ごめんなさい……。
「事故だと思って忘れたほうがいい。
「えっ?
「帳消しにしろとは言わないけど、ハードルはオレが運んどく。
「事故……帳消し?
「……教室戻れ。遅れるぞ、次の授業。
「あ……うん。どうもありがとう。
「……ああ。
(行っちゃった……本当にお願いしちゃって良かったのかな……。)
(それにしても、さっきの感触ってやっぱり……。)
(と、とりあえず考えないようにしよう……かな?)

氷上格

事故チュー(出会い前)
(いけない、次の授業、音楽室だ。急いで移動しなきゃ)
コツッ
(あ……!)
………………危ないっ!
わ〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!
チュッ
えっ!?
……君、大丈夫か!?
いたたた……は、はい……なんとか。
そう、それは良かった。しかし、何かが当たったような……。…………ハッ!
ほっ……本当に、どこも、ぶ……ぶつかってないか!?
どこ……って言うよりも全身だったから……。ご、ごめんなさい。
いや、それはしょうがない、そういう意味じゃなくて、キッ、君は……
何か、……だ、大事なものを、今ここで失った、ということはないだろうか!?
大事なもの?これといって特に……。持ち物は全部あるし……
いや、そういう意味じゃないんだ、そうじゃなくて……。…………いや、何でもない。

君、気にしないで!僕も、気にしないようにする。そういうことで、手を打とう。
……ハッ、そうだ。校内は走らないでくれたまえ。以上だ、失敬!
(あー……体が痛い……。あの人には、悪いことしちゃったな)
(……それにしても、”大事なものを失った”って、どういう意味だろう?)
(まさか、さっきの感触!…………。深く考えないようにしよう……。)
事故チュー(出会い後)

針谷幸之進

事故チュー(出会い前)
(どうしよう……!次の授業に遅れちゃう!!)
きゃっ!
うわっ!
チュッ
いった〜い……。
(いま……唇がなにかに触れたような……もしかして……)
イッテェ……おい、オマエ!今、オレのほっぺに……
えっ?
キ……キス……しただろ……。
ええっ!キ……キスなんて!
……オレにそんなコトできるなんて、そうそうねえんだかんな!特にこの先!
ラッキーだったな。将来、絶対自慢できるぞ!じゃあな!
え……え〜!
(今の、本当に……?自慢なんてできないよ〜!)
事故チュー(出会い後)

クリストファー・ウェザーフィールド

事故チュー(出会い前)
事故チュー(出会い後)

天地翔太

事故チュー
(たまには寄り道して帰ろうかな。)
(さてと……。)
「わっ。

「あっ、すみません。
「ごめんなさい。大丈夫ですか?

(礼儀正しい子だなぁ。中学生かな?)
「……あの……?
「あっ、ごめんなさい。大丈夫です。
「それならよかった。じゃあ、僕はここで。失礼します。
「はぁ、びっくりした……ん?
(本?ひょっとして、いまの子の落し物?)
(あっちのほうに歩いていったよね。よし、追いかけよう!)
(おかしいなぁ、確かにこっちのほうに来たはず……あっ、あの後姿は!)
「あの……
(そうだ、名前が分からないんだった。うぅ、どうしよう……)
(……行っちゃった……)
(本のカバーに名前……は、さすがに書いてないか。やっぱり追いかけなきゃ!)
(はぁ、はぁ……ここで見つけられなかったらあきらめよう……)
(いた!)
「あのっ……

「え……あっ!
チュッ
「いたた……。 (なんか今……くちびるに、やわらかいものが当たらなかった……?)
「だ、大丈夫……ですか?
「あれ?さっきも駅前で……

「はい。あの、これ……落としませんでした?
「あ……僕の本だ。
「このためにわざわざ追いかけて来てくれたんですか?すみません。
「でもこれ、大事な本だったんです。本当にありがとうございます。………………

(ん?なんか見てる……?)
「……あの。さっき、僕のほっぺに……
「えっ?
「いえ、やっぱりいいです。それじゃ。
(ふぅ。渡せてよかった。)
(それにしてもさっきの感触……うーん、考えないことにしよう……。)

若王子貴文

事故チュー
「洗い物は、これでおしまいっと。ふぅ、時間かかっちゃったな。
女生徒「こっちもテーブル吹き終わったよ〜!うわ〜、急がないと部活に遅れちゃう!
「あ、先に行っていいよ。あとは棚にしまうだけだから。
女生徒「じゃ、お先ー!」
「さてと、わたしもちゃっちゃと片づけて帰ろうっと。えーと、シャーレの棚は……。
「う〜ん、届かない……。あともうちょっと……よいしょっと!
「わっ、わわっ!!
「危ない!
「えっ?
チュッ
(え!?)
「若王子先生!!
「…………。
「あっ、あの……すみません。
「……いえいえ。先生こそ、受け止めこそねました。
「若王子先生、大丈夫ですか?
「大丈夫。ビックリはしたけど。君こそ大丈夫?あ、唇以外という意味で。
「えっ!?
「冗談です。
「念のため、保健室に行ってきた方がいい。あとは先生がやっておきます。
「はい。それじゃあ、失礼します……。
「もしかして今……。
「わたし、キスしちゃったかも……。

真咲元春

事故チュー