校庭 |
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(わぁ、遅くなっちゃった!クラブ、クラブ!) 男部員「無理ですよっ!そんな細かいこと言われたって!それにこんな高さじゃ! 「そうかな……。 「あ、若王子先生。 「○○さん、やあ、遅いですね。先生なんか15分も前に来ました。 「すみません。それより、どうしたんですか? 「あ、そうでした。いいですか? 「踏み切り位置をもう3センチ深く。進入角は2度浅く。足の跳ね上げを── 男部員「だから無理だって!そんなに言うなら、若チャン、やって見せてよ。 「なるほど、それはそうだ。 女部員「若サマ、相手にしちゃダメです!危ないですよ! 「若王子先生、無理しない方が。 「無理……カチン。 「それじゃ、先生が証明して見せましょう。 「ベクトル方向にねじれモーメントが働いて……慣性抵抗と重力、抗力の和が…………いける! |
スチル |
「ハッ!! |
校庭 |
「わぁーーー!! 「ざっと、こんなもんです。 「若王子先生!すごいっ!! 「ありがとう。 「若王子先生……。どうして起き上がらないんですか? 「クビと背中がつりました。助けてください。 「わっ!若王子先生! |
校庭 |
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(ハァ……後片付け終了。後は、鍵を職員室に返して、若王子先生に報告して、それから── 「○○さん、こっちこっち! 「若王子先生?こっちって……あ!何してるんですか? 「ちょっと休憩です。君もどうですか?隣、空いてますけど? |
スチル |
「やあ、いらっしゃい。 「はい、お邪魔します……。 「…………。 「…………。 ★「まあまあ。 「…………。 「あの……いつまでこうしてるんですか? 「そうですね……じゃあ、君が一眠りして、目を覚ますまで。 「え?わたし、眠くないです。 「そうかな?じゃあ、目を瞑ってみて。 「はい……。 「やっぱり、べつに── 「シーッ……。 ★「ちゃんと、目を閉じて 「? 「ゆっくり、息を……出来るだけ静かに……そうだ……。 「…………。 (あれ?いつの間に、わたし……) 「おはよう。 「若王子先生……わたし、寝てたんですか? 「ほんの15分くらいです。なかなか魅力的な寝顔でした。 ★「ふふ…… (!!恥ずかしい……。) 「そのまま聞いて。 「一生懸命、何かをするのはとても素敵なことです。陸上でも、なんでもね。 「でも、今日みたいに、今にも倒れそうな状態で、無理をしちゃだめだ。 「とりかえしのつかない事故を起こすことだってある。 「……はい。 |
校庭 |
「ハァ……一眠りしたら、お腹が空きました。君は? 「はい、わたしも。 「健康な証拠です。後は先生がやっておくから、早く帰ろう。 (そっか、わたしが疲れてたから、それで若王子先生……) |
化学準備室 |
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(実験の後は片付けが面倒だな……え〜と、プレパラートの棚は……あった。) 「あれ?○○さん。 「はい?……わっ!! 「ふぅ……セーフ!危なかった……。 |
化学準備室(事故チューなし) |
「ご苦労様。……大丈夫ですか? 「あ、はい。なんとかセーフです。 「ビックリしました。 (あんまりそういう風には見えないけど……。) 「コーヒーを沸かしてたんだ。君も、どうぞ。 |
化学準備室(事故チューあり) |
「そんなに恐がらなくてもいい。先生、今日は手伝わないから。 「えっ?…………あっ! (そうだ、これっていつかと同じ……。) 「いえ、あの……そういう意味じゃ……。 「えっ? 「あぁ……そうか。うん、なるほど……。 「そうだ!コーヒーを沸かしてた。君も、どうぞ。 |
スチル |
「若王子先生は、いつもこうやってコーヒーを飲んでるんですか? 「そうです。 「あの、こうすると美味しいとか……。 「どうかな……そうでもないでしょう。 「じゃあ……。 「前は、こうしてコーヒーを飲むたびに、家からコーヒーメーカーを持ってこなくちゃと思ってたけど……。 「はぁ。 「どういうわけか、朝起きるとキレイさっぱり忘れてる。だからもう諦めました。 「諦めちゃいましたか。 「そう。 (ふふ、なんか若王子先生らしいかも。) |
教室 |
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(友達とおしゃべりしてたら遅くなっちゃった……早く帰ろう。) (あれ、まだ誰かいるのかな?……あっ。) |
スチル |
(若王子先生、だよね……。こうしてみると、やっぱり素敵だな……。) (でも、なんだかいつもと違う人みたい。それに……) (難しそうな式がいっぱい。なんだろう?) 「……あ。 |
教室 |
「遅いですね。忘れ物? 「あ、はい。わたし、おじゃましちゃって……。 「ん?あぁ、これ……これは、まあ……うん。 「……? 「ちょっと思いついたことがあったから。君は、気にしなくていいです。 「さあ、早く帰ろう。先生も、もう帰ります。 「あ、はい! (さっきの若王子先生、いつもと違う人みたいだった……考えすぎかな?) |
森林公園 |
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「今日は一段とにぎわっています。さすが、お花見だ。 「はい、本当に。 「それじゃあ、僕達も行きましょうか。花見客の仲間入りです。 「わぁ、きれい……。 「本当に。恐いくらい綺麗だ……。 「見てください。あっちの桜、ずいぶん古い木みたいだ……。 「どこですか? 「こっち。行ってみよう。 「はい。あっ……。 「……あれ?若王子先生? 「若王子先生! (いない……どこだろう?) 「若王子先生! |
スチル |
「○○さん。 「若王子先生……。よかった。 「どうしたんですか?そんなに大きな声で。 「若王子先生が、どこかに行っちゃうような気がして……。 「……どうして? 「すみません。なんだか、急にそんな気が……。 「そうか……。 「ほら、先生はここにいます。 「はい。 「ここに、いますから。 (でも、若王子先生って急にどこかに消えちゃいそうな気がする……。) |
はばたき駅 |
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(若王子先生……あ、もう来てる!) 「若王子先生、暑いですね! 「暑いです。こんな日は、やっぱり海でしょう。 「はい。若王子先生から泳ぎに誘われたのは、ちょっと意外ですけど。 「泳ぎには行きません。というより、先生泳げません。 「……へ? 「クルーザーです。 「クルーザー……ですか!? |
クルーザー |
「わぁ、本当にクルーザー……先生のですか? 「まさか。先生がいろいろお世話になってる人の船です。 「なるほど……。でも、こういうのって運転免許とかいるんじゃ……。 「いるでしょうね。 「……? |
スチル |
「クルーザーって、デッキの掃除だったんですか……若王子先生の嘘つき! 「ハハハ!嘘じゃない。ほら、君はちゃんとクルーザーに乗ってる! 「…………。 「ねぇ、せっかくこんな豪華な船に乗ってるんだから、楽しもう! 「ホラッ!! 「わっ!! (もう……こうなったら楽しんじゃえ!) |
街中 |
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(遅くなっちゃった!若王子先生、待ってるかな……あ、もう来てる!) 「若王子先生!あっ……。 ???「ドクター若王子。 |
スチル |
「君は……。 黒服「お久しぶりです。ドクター。よくやく見つけました。 「やあ、久しぶり。日本語、上手くなったね。どこで覚えたの? 黒服「日本に来て、あなたを探してるうちに。3年かかりました。 (誰だろう?お友達かな……。) 黒服「あなたの気まぐれに付き合っている暇はない。私と帰っていただけませんか? 「気まぐれなんかじゃない。僕には帰るつもりは無い。 「あの、若王子先生……。 「○○さん。 黒服「この女性は? 「彼女は関係ない。僕の生徒だ。今は高校の教師をしている。だから、戻るつもりは無い。 黒服「高校教師。IQ200のあなたが?馬鹿馬鹿しくて話にならない……。 黒服「才能の浪費だとは思いませんか?ドクター、あなたの頭脳が、いったいどれほど巨額の……。 「……生徒の前で、つまらない話はやめろ。 黒服「オーケー、分かりました。 黒服「I'll wait and see what happens.So long Dr. 「I said never.Forget me. 「さぁ、悪者はいなくなりました。行こう! (若王子先生……。) |
金閣寺 |
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女生徒A「あっ!!若サマ発見!! 女生徒B「ホントだ!!若サマ〜! 「……? |
スチル |
女生徒A「若サマ、ズルいです!私たちと一緒に来てくださぁい! 女生徒B「ねぇ〜!独り占め禁止〜! 「あ、いや……困りました。 (あんまり困ってなさそう……。) 「あの、行ってきてください。わたし、平気ですから。 「……そう。じゃあ、ちょっと行ってきます。 「あっ。 |
金閣寺 |
(本当に行っちゃった……。) (帰ってこない……。若王子先生って、けっこう押しに弱いからな……。) (他のところを周る時間がなくなっちゃう。ひとりで周ろっかな……。) |
清水寺 |
(……なんか、つまんないな。修学旅行なんて、来なければよかったかも……。) (あ、ここ、ガイドに出てた恋愛祈願の……。) (みんな楽しそう……。やっぱり、ひとりは寂しいな。) 「○○さん。 「若王子先生……。 「先回りです。先生をなめちゃいけない。 「でも、みんなは? 「あぁ、え〜と……撒いちゃいました。 「……いいんですか? 「良くないですね。でも、約束したから。一緒に周るって……二人で。 「若王子先生……。 「……そうだ。おみくじを買っておきました。一つあげます。 「あっ、大吉!なになに……。 (”思い人、来る”。) 「なんて?先生にも見せてください。 「ダ、ダメです……。 「あれ、意外とケチですね。 (いい思い出になっちゃった……。) |
ロビー |
「今日はこれで終わり。○○さん、ご苦労さま。 「いえ、そんなこと……。若王子先生、ありがとうございました。 「こちらこそ。……ところで、明後日の予定表は出してる? 「……あ。 「よかった。出してないことにしようかと思ってた。 「えっ……? 「明後日も一緒にまわろう。どうですか? 「はい、ぜひ! 「うん、楽しみです。それじゃ、明後日の朝、ここで。 |
スチル |
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「そこには、朝から晩までパテント競争と金儲けに明け暮れる人たちがいて……。 「大勢の人を幸せにできるはずの研究が、くだらない名誉や金のために独占されている。 「ほんの数年前。この海の向こうの出来事。 「そんなことが、あったんですか……。 「でも、君とこうしてると、まるで別の世界の話みたいだ。 「君が僕を、この世界につなぎとめてくれる。 「若王子先生。 「風が出てきたな……。 「さぁ、温かいコーヒーを飲みに行きましょう。 ★「うん、手を繋いでて。 (若王子先生……) |
スチル |
「 「 |
舞台裏 |
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(お客さんがたくさん……。) (このツバメの衣装も動きづらいし。転んだらどうしよう……緊張してきちゃった。) 「○○さん。 「若王子先生、わぁ!王子様の衣装、似合いますね! 「ありがとう。君だってなかなか、その……いいツバメっぷりです。 「…………。 「あれ?顔色が良くないけど、具合が悪いんですか? 「緊張してるんです。 「緊張……なるほど。 「若王子先生は緊張とかしないんですか? 「先生もお芝居は初めてだからドキドキしてます。でも、それがとても楽しい。 「楽しい、ですか……。 「上手くいかなかったら、その時ゆっくり反省すればいい。今はこのドキドキを楽しもう。 放送「これより、羽ヶ崎学園、学園演劇を開演いたします。 「○○さん。さあ、出番です! 「はい! |
スチル |
「ああ、なんとか私のこのルビーの瞳をあのかわいそうな母子に持っていってやれないだろうか? 「優しい王子様。そんなことをしたら王子様は目が見えなくなってしまいます。 「私には、目が見えなくなることよりも、あの母子が寒さに震えていることのほうが── (うぅ、このツバメの衣装、動きづらい……) 「わ、わかりました!じゃあボクが王子様の瞳をあの母子に届けてきましょう。 「それはいけない。もうおまえは南へ渡らなければ凍えてしまうよ。 (……と、ここで王子様の周りをクルッと一周──ワッ!!) 「スイマセン! 「なんのなんの。……ほら、次の台詞を。 「はい!えっと、ボ、ボクの…… (どうしよう、台詞が出てこない!) 「”ボクだって” 「”ボ、ボクだって……” 「”凍えて死ぬことより” 「”凍えて死ぬことより”……あ!王子様のお役に立てないことの方が辛いです! 「はい、良く出来ました。 「ありがとう。私たちは二人とも幸福だ。 (なんとか切り抜けた……若王子先生、やっぱりこういうときは先生らしい。) |
スキー合宿 |
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(はぁ、これで今年のパーティーもおしまいかぁ……。) 「……部屋に戻って寝ようっと。 「なんだかパーティで興奮して、寝そびれちゃったかな……。 「○○さん。どうしたんですか?こんな時間に。 「若王子先生。 「ちょっと、目が冴えちゃって。若王子先生は? 「目が冴えて夜更かししてる子を叱りに来ました。 「すいません、わたし部屋に── 「冗談です。先生は……なんだか、幸せで、眠るのが惜しくなって。 「幸せで? 「……手がかじかんでます。貸して。 「あっ……。 |
スチル |
「温まった? 「はい。若王子先生、さっきのお話……。 「……うん。 「僕は、ずいぶん子供の頃から数年前まで、ずっとアメリカの研究所で働いてた。 「はい。 「その頃は、クリスマスって、デスクの上のおもちゃのツリーと冷たいターキーのことだと思ってた。 「そんな……。 「それが不幸せなことだなんて、考えもしなかったから。 「若王子先生……。でも、今は違いますよね? 「うん。 「今夜はこうして大騒ぎをして、大好きな生徒達の寝息を確かめて歩いてる。 「それに、ときどき寝付きの悪い子がいて、話し相手になってくれたりもする。 「すいません。 「こんなに幸せなことは無い。僕は今、幸せを噛みしめてる。 「困ったな。これ以上贅沢を覚えると、後が大変そうだ。 「若王子先生……。 「さあ、そろそろ部屋に戻ろう。頬っぺが赤くなってきました。 「はい。 |
スキー合宿 |
「○○さん。メリークリスマス。 「メリークリスマス。若王子先生。 「来年は君の手が、かじかんだりしませんように。 「はい。 「来年も君の頬っぺの上に幸せが訪れますように。 (こうして、2008年のクリスマスイブは終わった……。) |
スキー場 |
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「思ったより風が強いですね。吹雪く前に、降りたほうがいい。 「はい。若王子先生、無理しないで下さいね? 「あ、カチン。ロッジまで競争しますか? 「いいですよ。 「Go! 「あ、ズルい! (離れすぎちゃったかな。ちょっと待ってよう。) (風が強くなってきたみたい……。少し冷えてきたし。) 「若王子先生大丈夫かな……。探しに行ってみよう! 「若王子先生! (いない……どうしよう……。) 「若王子先生!若王子先生! (わっ!) |
スチル |
「危ない! 「若王子先生……よかった。 「もう大丈夫。落ち着いて。 「わたし、若王子先生と、もう二度と会えなくなるような気がして……。 「…………。 「若王子先生は、どこにも行きませんよね? 「心臓の音、聞こえる? 「……はい。 「ここに居るだろ?落ち着いて。 「はい。 「僕はここに居る。どこにも行かない。 「もう君を不安にさせたくない。だから……。 (若王子先生……。) |
スキー場 |
「先生が後から付いて行くから、吹雪になる前に、ロッジに戻りましょう。 (若王子先生、何か言いたそうだった……。) |